75話:話し合い2

「だ、誰がそんなデマを!」キルケが叫んだ。
「だからぁ、それが分かれば苦労はしないんだけどね・・結構巧妙に噂が流れていてなかなか足取りが掴めないのよ・・。」
頭の回転の早いジェラルドが口を開いた。
「ということは、つまり、塔の王子を助けて、竜を帰したい俺たちと、グランディスのように竜を手に入れたい一派、そして、そのデマ情報に踊らされて竜を殺そうとしているもの達の3組がいるってことか?」

「頭のいい子は好きよ〜。そうね、王家側では隠しているつもりのようだけど、今ユフテスの内情はほとんど外に筒抜けと言っても良いわ。この国、竜が居ようがいまいが、一度ちゃんと中枢部を粛正する必要があると思うわよ。まあ、王子達は結構皆良い子に育ってるみたいだけどね。まあ、儀式の方は早ければ明日の朝と言う事になっているみたいだけど、その辺はあの王子達がどうにかするかしら・・とりあえず塔の中にいる王子だけでも先に攫って来ても良いのだけど、一番早くて動くとすれば今晩かしらね。まあとりあえず貴方達には王宮に出向いた時に王子に確認して頂戴?」

「ああ、カイルにはすぐにでも逢わなければな・・借りはたっぷりと後で利子付きで請求してやる!しかし・・じゃあ、儀式を急がしているという連中にも何か思惑があるという事か・・。」
「本当にね・・?何考えてんだか分からないけど・・。ともかくうちのカルナはひっ捕まえてこの件からは手を引かせるわ。まあ、あなたとの1日デート券とでも名をうってあげたらあの子も納得するでしょうし・・・」

ジークフォルンに見つめられたジェラルドは鳥肌を立てて叫ぶ「な、何を言っている?!」
「ああ、誤解しないで、あの子、別にそんな趣味がある訳じゃないのよ。ただ、なんというか、強いものに惹かれる?まあ、ようは1日あの子と手合わせしてくれたら助かるんだけど・・」

「手合わせ?そいつ、剣をたしなむのか?」
「どちらかというと、暗殺に向いた使い方だけどね、なかなか出来るわよ。あたくしの息子ですもの」そういってにやっと笑う。
「まあ・・・手合わせぐらいならしてやってもかまわないが・・・」
「じゃあ、それで決まりね!さて、とりあえず、貴方達二人を王宮に送って行くわ。キルケちゃんは残って頂戴ね?色々・・と話する事があるし。」

そこで、リディアが口を開いた。「あの・・・ジークフォルンさんは何故私たちの事情を色々と知っているんですか?私たちが王族だという事も・・・?」
「あら、今更ね!ほほほ・・・・そりゃあ、一応商売してる国の王女や王子の顔ぐらい覚えてるわよ。キルケちゃんからも少し聞いていたし。あたくしにはあたくしなりのネットワークが色々とあるのよ。あなたたちの事を調べるのなんて訳ないわ。」

「でも、キルケちゃんもそうだけど、、、見ず知らずの人達を私たちの計画に巻き込んでしまって・・」とリディアが口ごもる。
キルケがクッと鼻で笑って言った。「今更何を言っている。どうせ俺もジェラルドもお前の計画に巻き込まれた口だ、今更一人や二人増えようと代わりない。それに俺とジークフォルンはその竜ってのに興味があるんだ。ああ、誤解すんな?もちろんあんなデマを信じている訳じゃない。まあ、こっちにはこっちの事情がある。お前が気にする事はない。俺はお前達が行ったらすぐに、儀式の準備を始める。お前達は気にせず、そのカイルとかいうやつと逢ってくるんだな。」

「ありがとう!キルケちゃん」ぎゅっとリディアはキルケを抱きしめた。
「あ、そうだ!そういえば、明日、ユフテスの城で晩餐会があるんじゃなかったかしら。貴方達もちろん出席するのよね?」ジークフォルンが思い出したようにつぶやいた。
リディアがはっと顔を上げる。「え、明日?!どうしよう・・・私今着ているドレスしか持ってないわ・・」晩餐会用に持って来たドレスや荷物は全て残りのものたちと一緒に置いて来たままだ。

「大丈夫よ。このあたくしに任せておきなさい。必要なものは全てそろえておくから、ユフテスで、王と王子に挨拶をしたら一度戻ってきなさいね。さあ、いってらっしゃい」そういってジークフォルンは二人を送り出した。玄関先にはいつ用意がされていたのか御者のついた馬車が待っていた。ルークとマリアベルが玄関先で二人を待っている。
「手際がいいな・・」ぽつりとジェラルドが呟いた。彼らは馬車に乗り込むとユフテス王城へと向かって行った.

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