67話:真相

キルケが帰ってくるのと前後して船の周りを徘徊していた狼や他の動物達がいなくなった。
「キルケ、無事だったか!」駆け寄ってくる皆を安心させるように強く頷く。
「大丈夫だ、問題ない。」
「何故か船の周りにいた獣達が全て消えたんだ。お前がボスを仕留めたのか?」
「ああ・・まあそんなところだ。また船が壊されたりしてないだろうな?」
「大丈夫だ。しかし、まったく次から次へとなんだっていうんだ!」
「そうだな・・・でも嵐がくるかと思ったが、どうやら晴れてきている。」ジェラルド達が空を見上げると雲の合間から満点の星が見えた。
「綺麗・・・」リディアのつぶやきに皆が空を見上げる。長い夜は幕を閉じた。

次の日の早朝早く一行は離島を後にした。島をでる前に、今一度背に視線を感じたが、それは殺気を含んだものではなかった。
2日の後、彼らはウリムナ大陸へと辿り着いた。帰りの為に船を整備する船長や船員達と別れ、ジェラルド達は一路ユフテスへの道のりを急ぐのだった。
道すがらキルケは昨晩、ミルセディから念波で聞いた情報の事を思い返していた。

ーーーキルケ、遅くなって済まない、お前の言っていたジークフォルン殿の事が分かったぞ

ーーージークフォルン殿・・ってなんで尊称付きなんだよ・・・?

ーーーそれは、、彼は古の異能者の一族だし、お前もジークには昔よく遊んでもらってただろう?まあ、私もあまり覚えていなかったから、私よりも幼かったお前が覚えてないのは無理も無いかもしれないけど・・・姿も変わっているようだしな

ーーーんなっ・・・?え?ジーク?あの、、変態か?!
その途端、キルケの脳裏には、生まれたばかりの小さな金色の竜を追い回すウザイ男の姿が描き出された。暫くの間思考が止まる。

ーーーこら、変態だなんて失礼な事を言わないように・・彼は異能者の長の息子でもあり、アルファスの師でもあったバルザック殿とも関係があるそうだよ

ーーーあの変態・・そんなに偉い奴だったのか・・・?つーかなんで俺に付きまとうんだ!

ーーーさあねえ・・・昔から君の事をすごく気に入ってたようだったからねえ。私も色々と思い出したよ。小さい君を捕まえてはあれこれ飾りつけてたよね。いくら転生しても、記憶や性格はそのまま受け継がれているだろうから・・今もあんな感じなのかな?

ーーー・・・・・ゼンッゼン変わってねーよ

ーーーははは、そうなのかい?まあでも長老が言うには彼はきっとキルケの助けになると言っていたよ。また会う事もあるだろうから私たちからも宜しく伝えておいてくれと・・

ーーー俺はまったく会いたくないけどな・・・

ーーーそうだ、お前地上にある旧世界での遺跡を勢いよくぶっ壊したそうだな。オリバー爺が呆れていたぞ。見つけたら壊せとは言ったがあそこまでやるとは思わんだった・・って。爺さんも甘いよな・・・お前の性格を考えると・・・いや、まあいい、ともかくアルファスの事、頼んだぞ。お前一人に任せるのは心苦しいが・・

ーーーいいよ。分かっている。お前の薬があっても地上の空気はかなりキツい。気にするな。また何かあったら連絡するよ

ーーーありがとう、キルケ。じゃあ、また・・・・

まったく考えてもいなかった。あのジークフォルンがオリバー爺が話していたこの世界を救った異能者達の一人だなんて・・・あんな変態、誰がどうみたってそんな偉いやつだなんて思いもしないだろう。オリバー爺に言えば、「だから、いつも外見ではなく魂を見ろと言っておるだろう」と説教されるのが落ちだ。

何度もはあっと大きなため息をつくキルケをジェラルドとリディアは不思議そうに眺めていた。

           前のページへ  / 小説Top / 次のページへ