59話:離島1

「で、ここはいったい何処なんだ・・・?」ジェラルドが少々不機嫌な顔で誰にともなく問いかけた。が、当然誰からも答えは帰ってこない。
おずおずと船長が申し訳なさそうに声をかける。「多分・・・ウリムナ大陸より西南に位置する辺りですが、この辺の島はほとんど無人島ですので、、どの国もこんな辺鄙で危険な海流近くにある島など欲しがりませんからな・・・。実際私もこんな島に上陸したのは初めてでして。」

結局派手に壊された看板や先端を修理する為に一番近くの孤島へとやって来た。思わぬところで足止めされた気分だ。できるだけ早くユフテスまでたどり着きたいが、致し方ない。この島の気候としては、リムドとウリムナ大陸の中間辺りに位置している為か、船を停めた海岸の先には鬱蒼と緑が生い茂っている。南国とも言えなくはないのだが・・どちらかと言うとジャングルに近い雰囲気だ。

「船を直すのにどれくらいかかりそうだ?」
「そうですね。幸い材料は一杯ありますし、皆さん総出で手伝ってもらえれば、、1日あれば大丈夫でしょう。まずは材料を切り出しにいかなければなりません。騎士殿、手伝ってもらえますかな?」船員と騎士らあわせて数十名、そして、海岸に残るリディア達を守るために幾人かが交代で待機することになり、一同は島のジャングルの中へと向かっていった。

キルケはリディアたっての願いで一緒に船の中で待機する事になったのだが、しばらくすると、キルケはリディアの目を盗んでこっそりと船から抜け出した。
実はこの島の上空は幾度か大昔に飛んだ事があるのだが、その時に空から奇妙なものを見つけていたのだ。その時はあまり気にも止めなかったが、それは太陽の光を浴びて銀色に光る遺跡のようなものだった。たぶん位置的に考えても、この島で間違いないだろう。上空からみた島の形を思い出す。此処からだと、人間の足では歩いて半日ぐらいの距離だが、せっかく1日の暇ができたのだ、見に行くのも悪くはない。森の中に入ってから移動魔法を使えば気付かれる事もないだろう。キルケはジェラルド達の後を追うようにゆっくりと森の中へ入って行った。

最初は大人しく船の守をしていたリディアだったが、一刻も立たぬうちからもう後悔し始めていた。もともとお転婆気質の上、冒険や探索と言ったものが大好きなのだ。本当はリディアも騎士らと一緒について行きたかったのだが、ジェラルドにさんざん説教をされて、危険だと置いて行かれたのだった。ジェラルドがキルケを残して行くというのでしぶしぶ船に残ったのだが、肝心のキルケは先ほどから見当たらない。今船に残っているのは、マリアベルやナタリー、ルークといった侍従達と、船を守る兵士らと怪我をして残っている騎士達、そして船長だ。

暫く船内を探していたリディアが呟く。「もしかして、キルケちゃん、ジャングルの中に入って行ったのかしら・・・こんなに探してもいないなら、やっぱり外に出て行ったとしか思えないわよね。」リディアはキルケにかこつけて理由をつけると、マリアベル達の目を盗んで船から脱出する。丁度マリアベル達は、船の厨房でお腹を空かせて帰ってくるであろう騎士達の為に料理をしているところだった。
見はりは何人かいるが、抜け出す事にかけては長年のキャリアを持つリディアは悠々とジャングルの中に入っていった。

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