2話:塔の中の出会い
塔の中は思ったよりもひんやりと冷たく王女はぶるっと身震いした。ずっと走り続けていた為か、汗をかいた体が急激に冷えていく。リディアーナは急ぎまた、階段を上り始めた。人一人通れるかどうかの細く狭い階段を一歩ずつ登って行く。
「本当になんて高い塔なの・・・?」塔の階段の所どころに、鉄格子の嵌まった小さな窓が取り付けてある。その隣には小さな燭台がある所を見ると夜には蝋燭の明かりがともるのであろう。城からみたのと同じく、この塔からは森を隔てて古いが、豪華な城が見えた。
少しずつ休みながら登って行くと、少し開けた空間にたどり着いた。そこには鋼鉄のドアがひっそりと佇んでいる。
「ドア・・・誰か中に居るの・・・?」小さくつぶやいた声に返事が帰って来た。
「そこに居るのは誰・・・?」大人の声ではない・・自分と同じぐらいの幼い声を聞いた王女はびくっと体をふるわせたが、おそるおそるそのドアに近づいていき声を掛けた。
「私・・?私はリディアーナ、リディアよ。貴方は誰?何故こんな所にいるの?」
暫くすると中からまた声が返ってくる。「リディア・・?女の子?君こそ何故こんな所にいるんだい?」
「あ・・私は城の中からこの塔をみてどうしても気になってここまで来たの。貴方は・・ここに住んでいるの?」
「住んでいる?」少年はふっと年に似合わぬ自嘲的な笑いを浮かべると言葉を綴った。「いや・・そうだね、僕はずっとここに閉じ込められているんだ。そう、僕の18の誕生日を迎えるまでね・・。」
リディアは少し驚いて、そして言った。「何か悪い事でもしたの?お外に出る事はできないの?」
と、中からカタンと音がして、リディアーナが下を見ると、そこに小さな窓が開き中から少年の手が出てきて王女の足首を掴んだ。
「きゃっ!」悲鳴を上げて王女は尻餅をついた。丁度目の前の長細い窓から見えた少年の目に彼女は射すくめられた。それは彼女が今まで見て来た中で一番印象的な目だった。濃いグリーンはまるで木々のざわめきの様に時として色を変える。暫くの間ほうけてリディアは彼の視線に釘付けになっていた。
「ごめん・・驚かすつもりはなかったんだけど、、女の子なんて久しぶりに見たから・・」そういうと彼は手を引っ込めすまなさそうに謝った。リディアはおそるおそる窓に近づくと、もう一度彼の容貌をじっくりと見る。
薄い金髪に寂しげだが意思の強そうな瞳、通った鼻筋と少し荒れているが形の良い唇。そこでリディアは思い出した。
「貴方・・昨日あったユフテスの王子様にそっくり・・・」