9話:美香流学校へ行くの巻2

「How to pronounce your name?」私の胸に貼られたビジターのシールを見ながらその人は言った。私は何を言われているのかわからなくて、つい引き越しになる。そうするとその人は自分を指して、「I'm Ms. Mary, what is your name?」ともう一度聞いてくる。
名前・・・この人今ネームって言ったよね?私の名前を聞いてるのかな・・・・。
おそるおそる私は彼女に問いかける。「ネーム?」そうすると彼女が頷いた。
えっと、確か・・私は覚えたての英単語を並べる。「マイ・・ネーム イズ ミカル」

「ミーカル?」なんか微妙に違うが一応通じたみたいだ。私はこくりと頷いた。するとその人はニッコリと私に微笑んだ。こちらの人は目が合うとよく笑いかける人が多い。日本でそんな事をする人はあまり居ないと思うがお父さんがこちらでは挨拶のようなものなので慣れるようにと言っていた。とりあえず私も笑っておく。ちょっとほっぺたが引きつるのはご愛嬌という事で・・・。すると、その人はお父さんに何かを話しだした。何を話しているのかと不思議に思ってお父さんの手をぎゅっと握る。

「美香流、メアリーさんが言うには、一度校内を見回った後、良ければそのまま学校が終わるまで居てみないかと言われているんだが、どうだい?」
「え?それって、私一人でってこと?」
「ああ、不安かい?美香流が嫌ならもちろん無理にとは言わないが・・。」
はっきり言って不安だった。これからどちらにしろ一人で学校に通う事になるのだが、さすがに今日からいきなりだとは思っていなかったし、まだ心の準備が出来ていない。どうしようかと迷っていると、ジリリリリリ〜ンといきなり校内に響き渡るベルの音が響いた。
廊下にずらっと並ぶドアから沢山の外人が出て来て一気に賑やかになる。私は驚いてその風景を見やった。なんだか映画を見ているような気分だったのだ。

また、隣で、ミス、メアリーが何事かを2、3個呟いた。お父さんが私に通訳をしてくれる。「どうやら、4時間目が終わってこれからランチだそうだよ。カフェテリアという所で食事が食べれるそうだ、美香流もいってみるかい?」
はっきりいってお腹は空いていたので、私は頷いた。ミス、メアリーが先に立って案内をしてくれる。今までずっと給食だった美香流にとってそれは初めての体験だった。
沢山の椅子とテーブルが合体したものが外の見える大きな窓の前に並べてあり、端のほうに、何人もの学生が並んでいる。

これが同じ年の学生なのだろうかと思うぐらい、大人っぽい子が多い。女の子達はお化粧やピアスをしている子達もいる。服装は私服のようだった。やはり父親と、ミス、メアリーに囲まれて立っている私は目立つのか、じろじろと遠慮無しの視線を浴びせてくる。なんだかとても居心地が悪かった。こちらを見ながらぺちゃくちゃと話をしている女の子達もいる。

本当に見渡すばかり、外人だらけだ。ふと遠くを見ると、黒髪の子も何人か居るみたいだが、聞いて見ると、その子達は、韓国人の学生らしい。沢山積み上げられているお盆を一人ずつとって、列にならぶと、給食のおばさんみたいな人が、お皿にマカロニのチーズ掛けみたいな物と茹でたブロッコリー、そしてころころとした形の揚げたポテトを入れてくれる。飲み物は、ミルクやオレンジジュースなどを選んで、支払いを済ませると言った方式のようだ。私の前にいた男の子は食券みたいなものを渡して出て行った。

どうしよう・・私、食券なんて持ってないと青くなったが、お父さんが支払いを済ませてくれる。「一食分、大体$1、50セントらしいね。ほら見てご覧、こんな物まで売ってるよ。」見ると其処にはバナナやリンゴなどの果物に加え、とても大きなクッキーなどが置いてある。それにスーパーで見た見た目が派手なお菓子なども売られていて私は吃驚する。
あ、そういえば、買ってもらったお菓子、まだ食べてないなあ・・今晩、ギャバ猫と一緒に食べよう!
昼食はあまりおいしいとは言えなかったが、お腹は一杯になった。昼食の後、まだ3時まで学校があるらしい。体育館や図書室、コンピュータールームなど学校にあるすべての施設を回った後、もう一度、最後まで残るかどうか聞かれたが、美香流は力なく首を振った。さすがにまだ日本から来て2日目、まだ時差ぼけや疲れも残っている。
最後にミス、メアリーはまたねと言って手を振ってくれた。これから、この学校に通う事になるのだ。私とお父さんは、ミス、メアリーにお礼を言うと一緒に車に乗り込んで不安を胸に抱えたまま家へと帰った.

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