8話:美香流学校へ行くの巻1

「美香流、起きなさい!朝よ!」ギャバ猫お母さんが私を呼ぶ声が聞こえます。
「ふわっ〜!」大きく伸びをして私はベットに起き上がる。ああ良く寝た。窓の外から鳥の声が聞こえる。ふと外を見ると真っ赤な鳥が窓際に居るのが見えた。
「わあ!すごい!真っ赤な鳥!なんて名前だろう・・」
私はわくわくしながら階段を下りて行く。

昨日の晩に買って来たパンを頬張りながらお父さんとギャバ猫お母さんが待っていた。
「ねえ!お父さん、今さっきすごく赤くて綺麗な鳥が窓の外にいたんだよ!」
お父さんは首を傾げながら言った。「赤い鳥・・カーディナルかな?」
「カーディナル?」

「ああ、たぶんね、今度鳥の図鑑を買って上げるからそれで調べてごらん?それよりも、美香流、お父さんと一緒に、先にサムおじさんと一緒に車を買いに行ってから、一緒に学校に手続きに行こう。その後はここの大家さんが見えられるから御挨拶しないとな。明日からお世話になる事だし・・・。」

「え?どうして?私、ギャバ猫と一緒にお留守番しておくよ?」
「う〜ん、美香流、アメリカでは、13歳以下の子供を一人で家に置いておく事はできないんだよ。そういう法律になっている。だから、これからお父さんが居ない時は、いつも近所に住む大家さんに来てもらうか、涼子さんが人型になっていてもらわないと行けないんだ。」
日本とアメリカの文化の違いに驚きながら私は尋ねた。

「え、じゃあ、次の私の誕生日までは、ずっと他の人がお家に居るって事?」
「昨日、涼子さんとも話し合ったんだが、涼子さんができるだけ早く完璧に人間に変化する事が出来るようになるまでの間だけ、大家さんに頼もうと思っているんだ。それから、、アメリカで偶然、生前の妻と生き写しの彼女に逢ったという事にしようかと考えているんだけどね・・」
お父さんも、ギャバ猫お母さんの事、色々と考えているんだと思いつつ、私は頷いた。
「わかった。じゃあ・・・ギャバ猫お母さんがちゃんと人型になれるまでは、大家さんのお世話になるよ。でも・・大家さんってアメリカ人なんだよね?私・・大丈夫かなあ」英語がまったくできない美香流の中に一抹の不安がよぎる。

「大家さんは、この近くに住んでいて、家を行き来できるという理由もここを選んだ理由なんだ。大家さんには、美香流と同じ年の男の子が一人いるんだよ。今日一緒に挨拶に来られると思うけど、さっきも言った通り、美香流の誕生日までは、お父さんが会社から帰ってくるまでは、その人達と一緒に待っていてほしい。なあに、すごく良い方達だから美香流もすぐに慣れるよ!」お父さんはギャバ猫を撫でながらうんうんと頷いている。
「しっかりし〜や、美香流。まあ心配せんでもすぐに慣れるやろ?もしその男の子にいじめられる様な事があったらうちが引っ掻いたるさかい、大船にのったつもりでおりや?」
「う・・うん」

それから私は急いで朝ご飯を食べて洗面を済ませ、服を着替える頃には、サムおじさんが下で待っていた。「おはよう、美香流ちゃん、今日も良い朝だね〜。さて、今日は車をゲットしにいくぞ〜!」
「じゃあ、いってくるね、ギャバ猫!」
テンションが異様に高いおじさんにつれられて、私たちは、車のディーラーという所で、日本車の車を購入した。日本でお父さんが乗っていたのと良く似たタイプの車だった。
お父さんとおじさんがややこしい手続きを済ませている間、退屈して色んな車を見ていると、若い外人のお兄さんが笑って、チョコレートキャンディーをひとつ手渡してくれたので、それを食べながら待つ。最初は色々と話しかけてもくれたのだが、全然何を言っているのかわからないのでそのうち向こうも首をすくめて行ってしまった。ああ・・・今日からこんな日が毎日続くのだろうか。

買った車はその日の内に乗って帰れるという事で、私とお父さんはサムおじさんにお礼を言って、今度はお父さんにつれられて、私がこれから通う事になるというミドル・スクールへと向かった。車をパーキングに止めると、お父さんと私は連れ立って一緒に学校のエントランスをくぐる。玄関を入ってすぐ右に大きなオフィスの様なものがあり、お父さんはそこにすたすたと入って行くと、私を指差しながら何か言っている。持って来た書類などを手渡してそれで終わりかと思えばオフィスに座っていたおばさんは笑いながら大きく頷くと、私とお父さんに「ビジター」と書かれたシールを手渡した。もちろん私には何が書いてあるのか分からなかったが・・
「お父さん、何コレ?」
「Visiter=訪問者と言う意味だ。今から学校を案内してくれるらしい、このシールにマジックで名前を書いて胸に貼っておくんだよ。それから明日、学校に入る前に予防注射をしないといけないのをすっかり忘れていたから、お父さんが予約をとるから明日、大家さんに連れて行ってもらわないとな・・・」

私はびっくりして声を上げた。「注射?!だって私、病気じゃないよ?」
「学校に入る前の規則なんだ。」お父さんはそう言って申し訳なさそうに笑った。
「Well, Are you ready now?」行きましょうか?と言うようにオフィスのおばさんが手を出した。私はおずおずとその手を取る。なんだかこれから売られて行く牛の様な気分だった。

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