6話:初めてのスーパー
「お父さん!晩ご飯はステーキでしょ?」私は勢いよく階段を下りながら階段の手すりに身を乗り出してお父さんにいった。
サムおじさんが笑いながら言った。「美香流ちゃん、ステーキが食べたいのかい?じゃあ、どこかレストランに連れて行こうか?」
私は首を振って行った。「ううん、おじさん、今日はギャバ猫がお腹をすかせているもの。お家でお料理するからお買い物に連れてって下さい。」
「へえ、美香流ちゃんはしっかりしてるね。料理もつくれるのかい?」
「少し・・」といって口ごもる。実は目玉焼きや簡単なものしか作れないのだが、、、。
「よし、じゃあこの近くのスーパーに連れてってあげよう!」とおじさんが言った。
私とお父さんとサムおじさんはもう一度車に乗り込んで、スーパーへと出かけて行った。
すごく大きなパーキングに車を止めると、おじさんはにこにこしながら、ここで明日の朝食などの買い物もしとくと良いよ。といってくれた。
店内を見回すと、大きな買い物カートにいっぱい食べ物を詰め込んだ、太ったおばさんが目立つ。太ったといっても、それは日本で見る少し太ったおばさんではなく、本当に牛のように大きいのだ。大きな大きなおしりを目の前に美香流は唖然としてつぶやいた。
下手すると自分が3人ぐらい入りそうな大きなおしり用のパンツが売っているのだろう。アメリカって大きい!と美香流は変な所で感動していた。
お父さんが野菜や果物、他の色々な材料をカートに入れて行く。
「お父さん、うちにフライパンはあるの?」
「この間日本に帰られた日本人駐在員のお宅からまとめて買ってあるから必要最低限の物は揃っていると思うよ。まあ、片付けてないから、段ボール箱にまとめてあると思うけど。
「じゃあ、調味料とかも必要だね!」塩こしょうに、考えつく調味料を手当たり次第に入れて行く。「あ、お醤油とかってあるのかな?」
するとサムおじさんが、昔ながらの赤いキャップに入ったテーブル用の醤油を持って来て行った。「最近はヘルシーだとかっていって日本食ブームだからね、こんな田舎のスーパーでも醤油ぐらいは売っているさ。」
それにしてもアメリカのスーパーは広いだけでなく、売られている物もバラエティ豊かだった。真っ青なクリームの塗られたケーキは流石に美香流もびっくりしたが、小さな男の子がドーナツのおいてあるセクションにいって、扉を開けて一番下の端にあったクッキーを一枚取るとおもむろに食べ始めた。びっくりした美香流が見ているとその男の子と目が合い、そうすると、その男の子はもう一枚クッキーを取って美香流に差し出した。
何かを英語でいっているようだが、もちろん美香流にはわからない。困っているとサムおじさんが来て、その子に何か、言って、クッキーを受け取り、美香流に渡した。
「え?いいの?サムおじさん、だってこれ、お金払ってないよ?」
「大丈夫だよ。あそこの端に置いてあるクッキーは店のサービスで子供達がかってに食べて良いものなんだよ。」そういって手渡された、クッキーを一口食べてみたが、あまりの甘さにびっくりする。そんな様子をまたサムおじさんが見て大笑いしていた。
その他、食パンや色んな物を入れると他のアメリカ人のおばさんのカートのようにうちもぱんぱんに積み上がっている。こんなに買い物をするのは初めての事だった。
美香流は興味新々ですべてのラインを歩き回ってみて見る。
ああ、でも今回は初めだから良いとして、今度はギャバ猫お母さんも一緒にこなくては、わからないと、美香流は思った。
「できるだけ早く尻尾と耳を隠す練習してもらわなきゃ・・・」
最後にレジに並んでいると、見た事もない鮮やかなお菓子のパッケージが並んでいた。一つぐねぐねした赤く長いお菓子を手にしてこれは何だろうと考える。お菓子をじっと見ていた私にお父さんが、どれでも、美香流の好きな物を一つ買っていいよというので、迷ったが、一番最初に手にしたお菓子を最後にカートに入れておいた。
他の人達に負けず劣らずいっぱい買い物をした私たちは意気揚々とうちに帰って来た。サムおじさんは、用事があるから、また明日!といって荷物を下ろした後、帰って行った。
「いい人だね、サムおじさん。」私はお父さんに言った。
「そうだな、これからも色々とお世話になると思うよ。さあ、ギャバ猫お母さんがお腹をすかせているだろうから早く晩ご飯を作ろう!」
2階の窓から私たちが帰ってきたのを見てたのだろう、ギャバ猫お母さんが、人型で降りて来た。
「遅かったのねぇ。いったい何をそんなに買い込んで来たの?」そういうギャバ猫お母さんの姿をみて私はびっくりした。「あ!耳がない!」そう、ギャバ猫お母さんの頭からにょっきり生えていたふさふさのお耳が人間の物に変わっていた。
「ふふ、すごいでしょ?でもこっちはまだなのよね・・」と後ろを向くとふりふりの尻尾がぴこぴこと動いていた。でも快挙だね!と3人で和気あいあいと台所に向かって行ったのだった。