8話:殿下の事情1

ーーー所変わってーーー

南向きの客室の1室では従者のルークが主人のジェラルドに外套を着せていた。
「全くもう・・・昨日は何も言わずにいきなりこちらの城に押し掛けるわ・・・今日もこんなに朝早くからいったいどこへ出かけるおつもりなんです?」

「まあ、まあ、そんなぶっちょう顔すんなって。別にお前が思ってるようなとこじゃねーよ。」
ぎろりとルークは主人を睨みつけていった。
「一時期、朝からいかがわしい所に入り浸っていた貴方のお言葉は信用なりませんが・・?」
「お前もリディアに負けず劣らずだな・・・。今回はそういうんじゃない。個人的な所用だ。お前はついてくるなよ?」
ルークはしぶしぶ頷いた。「分かりました・・。で・す・が!くれっぐれも問題は起こさないで下さいよ?!この間だって・・う、、もごっ」
止まりそうにない従者の口を塞ぐとジェラルドは苦笑して艶っぽい目を向けると言った。「わかったよ。そんなに俺がいなくて寂しいんなら、今夜添い寝でもしてやろうか・・?」

ルークは真っ赤になって叫んだ。「ぼ、、僕はそんな子供じゃありません!」
「はははは、じゃあまた後でな。」とジェラルドが部屋をでようとすると、ノック音がした。

「ジェラルド王子、いらっしゃられますでしょうか?」
あれは、、たしかリディア付きの侍女だったか・・?

「ああ、なんだい?可愛い子猫ちゃん、僕に何の用かな?」後ろでルークがかっぱーんと口を開けて固まっている・・ああ、なんだってあの方はあんな臭い台詞をはけるのか・・
新米メイドのナタリーは少し引き気味に身を固くすると言った。

「は、はい・・。あの、リディアーナ様が今晩のお夕食を一緒にどうかと誘われておりますが・・」

「リディアが?」予想もしていなかった台詞に今度は少しジェラルドの方が固まった。

「ーーふ〜ん・・・あのお姫様もいったい何を企んでいるのかな・・?」少し小首をかしげてナタリーをドアの壁にゆっくりと押しつけ耳元で囁く。
ナタリーは泣きそうになっている。生まれてこのかたこのように男性に詰め寄られた事がないのだ。後ろでルークの非難がかった声が上がる。「ジェラルド様!」

ゆっくりと手を離すと軽くため息をつく。「冗談だよ。そんなに熱くなるなって。そうだな・・・わかった、夕食の時間には間に合う様に帰ってこよう。。出席するとリディアに伝えておいてくれ。」

ナタリーはほっとため息をつくとそろそろとドアの方まで移動し、おおげさにお辞儀すると慌てて去って行った。
「ジェラルド様、あんな風に女人をからかうなんて趣味が悪いです!」
「別にからかってなんかないさ、、あのリディアが僕と一緒に夕食だなんて、何か企みがあっての事としか考えられないじゃないか。」
「・・・・嫌われているという自覚はあるんですね・・・。」ルークは深々とため息をつく。

「おっと、もう時間だ、遅れると何言われるかわかんねーからな、、あいつは・・ともかく行ってくる!」そういうとジェラルドは足早に出て行った。

 

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