79話:風4

カルナを引き連れてジークフォルンの館へと戻り、ジークフォルンの部屋に入るとカルナはジークフォルンにこずかれ、魔法陣を描き呪文を唱えた。
キルケが驚いたように顔を上げる。この魔術は超一級、しかも現代ではほとんど使われていない過去の遺物だ。唱え終わると同時に、青白い光を放つ魔法陣から見慣れない男の身体が出て来た。この魔術は、いってみれば亜空間に繋げる魔術で、それを魔石の補助無しで行うとは、さすがにジークフォルンが育てた息子と言う訳か。
でてきた男をカルナが足で蹴り上げ仰向けにさせる。見た事もない男だった。これがカルナを襲ったという刺客なのだろう。

小さく震える声が聞こえた。「こ・・殺せ・・・」
カルナがにやりと口の端を上げて答える。「やだね。俺より弱い奴の願いをほいほい聞いてやるほどお人好しじゃないんだよ、俺は・・。まあ、他の奴と違ってお前は結構強かったから生かしてやってるんだ。それよりも俺の親父がお前に聞きたい事があるってさ。さっさと素直に答えておいた方がいいぜ?知ってる事は全てな。はっきりいってこいつは俺より質が悪い!」そういってカルナはジークフォルンを指差す。

指差されたジークフォルンの額に青筋が立ったのと、男の顔が恐怖に引きつるのは同時だった。ジークフォルンは男に近づくとそっと顔を上げ、笑った。
「あら、結構いい男じゃない。カルナ、顔を潰さなかった所だけは褒めてあげるわ。さて、、あなたには聞きたい事があるのよ・・・。」

ジークフォルンが尋問をしている間、カルナは横にたつ小さな金の少女をまじまじと見つめていた、こいつがジークが猫可愛がりしているキルケってやつか。視線を感じたのかキルケが顔を上げ、言った。「何だ?」
「いや・・外見で判断できねーなと思って・・」カルナがにやっと笑って言った。小さな少女の成りをしているが、ジークの尋問を眉一つ動かさず見ている所はただ者ではない。それに、こいつからはジークと同じような得体のしれない感じがするのだ。こういう仕事を生業としていると、直感は行きて行く上で必要不可欠な要素だ。その直感が告げている。こいつはヤバいと。
キルケは一瞬あっけにとられたようにカルナを見てそしてにやっと笑う。
「ほう・・・わかるのか。お前は・・いかにも見た目通りと言う所だがな。そうそう、お前だろう、旅の途中で色々と罠を仕掛けたのは。アレの所為で随分と到着が遅れてしまった。
そのツケは払ってくれるんだろうな?」

「マジかよ?何故俺だって分かった?」
「匂い・・・とまあ、色々だ。そうだ、お前、グランディスが捕まえたというフィクサーの子供について何か知らないか?」
「フィクサー?ああ、知ってるぜ、俺があそこの魔術師に情報売ったからな。確か、グランディスのちっこい皇帝への贈り物だとかなんとかって言ってたっけ。」
「ふん、やはりそれもお前か・・まあ良い。うざいハエを叩きつぶす時に一緒に捕えるか・・。」ぶつぶつと独り言を呟くキルケに向かって面白そうにカルナが言った。
「なあ・・、お前とジークフォルンは一体何をしようとしてるんだ?今回の件についてはジークは口が堅くてなかなか教えてくれねーから俺が勝手に動いてたんだけどよ。」
「かき回していたの間違いだろ?」
「まあ、、、面白くなるにこした事はねーからな。」
「お前、ユフテスの竜の事は知っているんだろう?」
「ああ、竜ね、知ってるぞ。あいつらの狙いも動機はちがえどそれだからな。」
「お前は興味ないのか?」面白そうな物、やっかいなものに首を突っ込みたがる性分らしいカルナが竜に興味を示さないのが不思議だった。
「ん〜、アレは俺にとっては一種の禁忌だからな・・・。お前、この入れ墨の事を知っているか?」そういってカルナは自分を指差す。

「北方の今は失われた民族の首長が代々受け継ぐ文様だな・・・」
「へえ・・・本当によく知ってんだな。あいつは今でもあんまり詳しく話そうとしないが、俺も自分に付けられたこの入れ墨の事は色々と調べていたんだ。ま、その過程で、俺の民族が滅ぼされた事も知っている。あいつが何故俺を拾って育てたのかは知らないけどな。
んで、この入れ墨はさ、一族と竜の契約を示す物らしいってのは分かったんだが、大昔の、それもすでに亡くなった一族の契約の話なんてそうそう分かるもんでもないからな。
でも竜に関しては、人間がどうこうできる存在じゃないってのは分かる。」

北の民族と契約していた竜など居ただろうか・・・?とはいえ、キルケはまだ種族の中では幼い、知らない事実も沢山あるだろう、まああいつなら知っていると思うがな・・。キルケは立ち上がってこちらに向かってくるジークフォルンを見ながらそう思った.

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