51話:グランディス3

先帝が亡くなってから残された唯一の幼いオズベルトが皇帝となった。物心ついた頃より周りには自分にかしずく大人しかおらず、寂しさも相まってか、イルディアスにはよく懐いた。だが今のままでは、またいつ他の国から侵略、もしくは侵略併合した国より独立を求め離反されるとも限らない・・・内部でもあわよくば幼い皇帝を抹殺して自分が覇権を握ろうとしている臣下が少なくともいる。今回皇帝を一緒に連れ出したのも、自分の目の届くところにおいておく為だ。今の幼い皇帝では力が足りないのだ。

そんな時、帝国が抱える魔術師の一人であるジルベスターがこのユフテスの王宮地下に眠るという竜の話を持ち込んで来た。どこかの情報屋から情報を買ったのだという。ジルベスターともう一人・・グランディスの宰相はしつこく伝説の竜を手に入れるべきだと主張した。

最初は疑ったが、確かに竜が手に入るというならそれは願ったりだ。ユフテスに密偵を使わし、グランディスの大貴族からユフテスに嫁いだ第一側妃の証言や、そして塔に囚われているという竜の贄と呼ばれる男の事、ユフテスの内情を調べていくにつれそれが紛れもない事実だと確信した。

そして、最初にその情報をもたらした男、それがあの入れ墨の男だった。名前は確かオーセと言ったか、だがそれも本当の名であるかどうかもわからない。流れの情報屋だと奴は最初にあった時言って不敵な笑いを見せた。情報屋・・とは思えない程鍛錬された体、そして不思議な文様の入れ墨。そのところを突っ込むといつも上手くはぐらかされてしまう。
「趣味なんだよ。ナイフもね・・・。」そういってくるくるとナイフを器用に扱う。奴の言葉遣いに切れた一兵が奴につかみかかった事があった。奴は事も無げに鍛えられた兵をねじ伏せ、ナイフをちらつかせて脅した。

事実奴の情報屋としての能力は高く、奴がもたらした情報はことごとく当たっていた。しかし、腑に落ちない奴の素性。だか、今のところは奴を飼っている方が都合がいい。そう判断して私は奴を咎める事もなく好き勝手にさせている。
ユフテス城内にいる、第ー側妃との密談や封書のやり取りも全てあの男が取引していた。

まだまだ竜の生態やその竜がなぜユフテスで眠っているのかなど、わからない事は多い。だが、竜を手に入れるこのチャンスを逃す訳には行かない。ユフテスは小さな国だが、優秀な魔術師を沢山抱えている。今のグランディスは、国内の波乱を押さえるのに精一杯で他国に攻め込む余裕はない、優秀な魔術師達はそのまま国の軍事力にも大きく関わってくる。それにユフテスとてこんな時でもなければ、他の国から大勢の使者を招き入れる事はない。実に都合が良かったのだ。今回の王子の成人の儀は・・。それにこの小さな王国が今までどの国にも侵略される事無く、生き延びて来た事実こそ、この国が竜の加護を得ているという証拠ではないのか。手に入れる!その竜を・・・まだ幼いオズベルト様の為にも。イルディアスは拳を握りしめ幼い帝王がいる幕屋へと早足で去って行った。

「馬鹿だなあ・・・あいつも。本気で竜の加護が手に入ると思ってるのか・・って情報を流してるのは俺だけどな・・・クスクスーーー竜の事はともかく、俺はやっぱりエストラーダの第二王子と遊びたいな。剣豪・・・どれくらいなのかな。久しぶりに楽しめそうだ!」
入れ墨の男、オーセは木々の間を軽く飛びながら心底楽しそうに笑う。が、その途端彼の脳裏にキンキンした声が響く。
『カルナ、あんた何処をほっつき歩いてる訳?さっさと帰ってこいって言ったでしょう、まったくあなたって子は、何かに夢中になると人の話を全然聞かないんだから・・・』

『うっせーな、その名前で呼ぶなっつってんだろーが・・。大体なんだよ、そのキンキンした波動。普通の声でも十分キモイってのに・・・。」

『なんですって?!アンタって子は育ての親に向かって酷い言い草ね。私そんな子に育てた覚えは無いわよ?!ともかく一度帰ってらっしゃい。色々と忙しいんだから。』

『はいはい、わかったよ。じゃ、後でな。』思念波を遮断するとオーセはチッと軽く舌打ちして地面に降り立つと地上に降り立ち、移動呪文を唱え、その場から消え去った。

 

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