41話:竜の聖地5

オリバー爺が親友であるという長老に呼ばれ水晶の洞穴を出て行った後、2匹はなおも、今しがた聞かされた驚愕の事実を話し合っていた。

「人間が一度滅んで、今地上にいるのが異能者と人間の間にできた子供達の子孫だなんて、俺思いもしなかったよ。」リンドルンが興奮したように言う。
「うん・・人間達の中に魔力をもつ者と持たない者がいるのもそのせいなんだな・・。」子孫とはいえ、その異能者達がもっていたほどの魔力や力を受け継ぐ人間は少ない。だからこそ、地上で魔術師達は優遇され高い力を有するものは、高い給金で王族専属の魔術師となったりする。キルケも地上では、ギルドや王族から度々勧誘されていた。

「ミルセはこの事知ってるのかな・・?」
「さあなー・・あいつは俺たちの中でも一番勉強のできる奴だからな。俺たちが知らない事もいっぱい知ってるし・・。」

キルケはリンドルンと話しながら、もう一つ別の事を考えていた。アルファスが幼竜の頃世話になっていたという異能者の血を受け継ぐ者の末が今のユフテス王家。そして現在塔の中に囚われているという王子がその異能者の血と魂を色濃く受け継いだ者なのだろう。血が薄まっているとはいえ、潜在的にはかなりの力を秘めているに違いない。

望んでの事ではなかったのかもしれないが、結局アルファスはその者達の血肉を喰らい、5千年近くもの間、生き延びてきた。人間の血肉に染まった白の王・・。多少、アルファスがユフテスの王家に与した経緯は分かったが、今と昔では事情も変わっている。あいつをこのまま地上に残しておく事はできない。とすれば、やはりジェラルド達と行動を共にしている方が色々と得策かもしれないな・・。あと、ジークフォルンの事は・・ミルセの言った通りしばらくは気をつけつつ、様子を見よう。その間に何かわかるかもしれない。

「おい・・・キルケ、キルケってば!お前ほんっと一度何か考え出すと人の話聞かなくなるよな・・まったく。」リンドルンが少しむくれた様な顔でこちらを見ていた。
「ご、ごめん・・。えーと、、で、何の話だっけ?」
「だーかーらー、もうそろそろ地上に戻らないとヤバいんじゃないのって。なんか人間と会う約束があるとかって言ってたろ、お前。」
「あっ!」慌てて聖地の真ん中に置かれた砂時計を確認する。
「ほんとだ、もう行かないと。」
「帰りミルドんとこに寄って薬貰って行けよ。あれで結構息するのとか楽になるらしいぜ。それと・・アルファスの事・・頼んだぜ。」リンドルンの真摯な表情にキルケは頷いた。
「分かった、ありがとう、リンド。必ずあいつも一緒に・・今度は一緒にこの聖地に帰ってくる!」
竜体に戻り去っていったキルケを見送りながらリンドルンは呟く。「頑張れよ・・キルケ!」
キルケはミルセディから薬を貰い、ゲートを開いてもらう。
「キルケ、気をつけて行けよ。くれぐれも人間には気をつけろ、それと、あと、ジークフォルンの事については、もう少し待っていてくれ。」
「わかった、じゃ、行ってくるな、ミルセ!他の奴らにも宜しく伝えといてくれ!」
つかの間の里帰りを終えたキルケはもう一度地上へと戻った。今度は大切な者を取り戻す為に・・。

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