14話:密会2

「気になる事とは・・?」

「一つ目は、第一王位継承者のカイル王子だが、最近国に帰ってから、色々と不振な動きを見せている。表立ってではないがな。いったい何をしようとしているのか、少し気になるふしもあってなあ。ーー俺が不振に思ったのは、城に潜入した時だが、やけに城の見張りが薄かった。以前別の件であの城に入った事があってな、その時には幾重にも魔術の仕掛けが施されていて、さすがに大陸で有名な魔術師を排出している国だと感心したものだ。

今は王子の成人の儀式に関わる事で通常よりも人の出入りが激しいからそれもあっての事かと最初は思ったが、、どうも、こう・・いやな感じが拭えなかった。見られている・・というか誰かの手の上で踊らされているようなそんな感じだ・・。いや、実際わざとその本を盗ませる為に監視の手を薄めた様な・・俺の考え過ぎかもしれないがそんな気がした。」

「ふむ・・・これをわざと盗らせる為にか・・?しかし何故?」ジェラルドはリザルで3年の間共に過ごした友の事を思い浮かべていた。実際に最後彼と別れたのはほんの一月程前だ。やつは、この1ヶ月間の間に何を考え、成そうとしているのか・・・?
カイルは確かに見た目通りの優男ではない。時折カイルが見せる影のある表情、、そして強烈な意思を放つ鋭い目つきを何度か見た事がある。奴がそんな表情を見せるのはやはり、塔の中に閉じ込められている双子の兄弟が関係あるのか・・?と何度か考えた。

「さあな、俺だって確かな事は言えん。だがもう一つ城の地下に続く扉はかなりヤバい匂いがした。さすがの俺も身が竦むぐらいの・・・。その本はできるだけ早く術を解呪する。何か手がかりがありそうだしな。あの城、、いやあの国にはとてつもなく重大な秘密が隠されているのかもしれん。俺も乗りかかった船だ、ここまで来ると是が非でも知りたくなってきた・・

そうだ、それともう一つ、例の塔の事だが、国王の命令で警備の数が増やされた様だぞ。ご苦労な事だな・・そんなに塔の中の男に逃げられたら困る事でもあるのか・・。」

「何か・・が始まるのかもしれんな。いや、もう始まっているのか・・?」リディアが塔の中の住人と出会ってから全ては始まった。今では俺もユフテスの謎を巡る大きな波に飲み込まれている。そしてその波はキルケやまた多くの人物を巻き込んで行くのだろうか?いったい何が隠されて、そして始まろうとしているのか。ジェラルドはいい知れぬ不安をぬぐい去るように一気に茶を飲み干した。

「とりあえず、その本は三日あれば解呪できるんだな?ユフテスには6日後の出発だ、それまでにある程度の事が分かればいいが・・ともかく、3日後に、もう一度ここで落ち合おう。時間は今日と同じで良い。」

「分かった・・・今度は遅れるな?」とキルケそう言って薄く笑う。

ジェラルドは苦笑して言った。「時間に関してはお前も大概うるさい奴だな・・。努力するよ。もしその本が、何らかの意図があって俺たちの手に渡ったものなら、きっと理由があるはずだ。カイルの方については俺の部下にも探らせよう。じゃあ、3日後にーー」

 

           前のページへ  / 小説Top / 次のページへ