〜プロローグ〜

いつの頃からか・・僕はすべてに期待する事を諦めた。
痛み、苦しみ、苛立、恐怖、喪失感、ありとあらゆる負の感情に疲れ果て、操り糸の切れた人形の様になってしまうのに、どれほどの時が必要だと言うのだろうか・・・

そう、でもここでの暮らしも今日で最後だ。僕は今日、生け贄となるのだから・・・青年と呼ぶには、まだ少し幼さの残る少年はこれまで、自分が過ごして来た石造りの質素な部屋の中を見回した。18年もの間、彼に与えられたのは堅固な錠の掛かった森の中の塔のみ。

物心のついた時から、彼はこの塔に居た。日に3回食事を届けにくる召使いや、塔を警護する兵士達の話を聞くにつれ、僕はより深い絶望と言う名の牢獄に囚われていった。「何故・・・?」理由さえも死を待つしかない僕にとっては無意味だった。何度死のうと思った事かわからない。だが、実際に死のうと思ったとき、僕の脳裏にある一つの約束が幻のように甦ってくるのだ。それは僕がこの18年の間、たった一つ宝物だと言える思い出。そうだ、僕はその約束のためだけに生きて来たと言ってもいい。これだけは全てを諦めた僕の唯一の「夢」なのだから・・・そう、実際に起る事が無いと分かっていても・                                 次のページへ